後立山(長野/富山) 白馬岳(2932.3m)、丸山(2768m) 2024年6月8日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 1:53 猿倉駐車場−−2:17 長走沢−−2:31 林道終点−−2:41 雪渓に乗る(標高1500m)−−2:53 白馬尻−−4:12 夏道(標高2200m アイゼン脱ぐ) −−4:35 小雪渓トラバース(アイゼン装着) 4:42−−4:50 避難小屋−−5:16 夏道(標高2630m)−−5:29 村営頂上宿舎−−5:49 白馬山荘−−6:05 白馬岳 7:02−−7:20 白馬山荘−−7:28 祖母谷方面分岐−−7:39 丸山−−7:59 2600m鞍部(アイゼン装着) 8:05−−8:14 小雪渓トラバース起点(アイゼン脱ぐ) 8:17−−8:24 大雪渓に乗る(標高2200m アイゼン装着) 8:26−−8:52 白馬尻−−8:56 夏道(アイゼン脱ぐ) 8:58−−9:05 林道終点−−9:14 長走沢 9:17−−9:35 猿倉駐車場

場所長野県北安曇郡白馬村/富山県下新川郡朝日町
年月日2024年6月8日(土) 日帰り
天候
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場猿倉に駐車場あり
登山道の有無丸山〜杓子岳鞍部から小雪渓まで以外は登山道あり
籔の有無無し
危険個所の有無小雪渓トラバースが急雪面で滑落注意。特に雪が締まった早朝はピッケル必携。2600m鞍部直下の雪渓も急なので滑落注意
山頂の展望いずれの山頂も晴れれば大展望
残雪装備10本爪アイゼン、ピッケル、ロングスパッツ(ハイカットの靴なら無くても可)
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コメントツクモグサ、ウルップソウ、体力テストの目的で今年初の白馬岳へ。ウルップソウはまだ咲き始めだったがツクモグサは既に祭り状態でピークと思われる。各種高山植物は咲き出していた。体力的には避難小屋を超えた先の雪の上が一番厳して休憩しようかと思ったが、どうにか山頂まで休憩無しで登れた。今日は空気の透明度が悪くて槍穂が最遠で、早い時刻からガスが上がってきた。麓ではシラネアオイ、オオサクラソウ、オオバキスミレ、ニリンソウ、サンカヨウ、キヌガサソウ、エンレイソウ、ショウジョウバカマ、オオタチツボスミレ、ツボスミレ等が見られた。下山時の駐車場の入りは7〜8割程度で空きが目立った


丸山から見た白馬岳。稜線の登山道はごく一部を除いて雪は消えている。でも大雪渓上部と小雪渓は急雪面のまま


長走沢。既に残雪は皆無で橋が架かっていた 林道終点
最初の沢には立派な橋がかかっていた 追い越された男性の足跡
標高1500m付近で雪に乗る 標高1760m付近の土石流
時々目印があるが暗闇では使えない 午前4時の東の空
標高2100m付近。葱平の尾根が見える 明瞭なトレースあり
標高2200m付近で夏道末端に乗る 今シーズン初のミヤマキンポウゲ
今シーズン初のヤマガラシ ミヤマキンバイも咲いていた
ウメハタザオと思われる ショウジョウバカマ
シナノキンバイの蕾 標高2330m付近。まだ夏道を辿れる
標高2350m付近で夏道が消えて小雪渓へ 小雪渓のトラバース。明瞭なステップが切れていた
トレースは避難小屋の裏側に出た 避難小屋から見た2600m鞍部。雪がつながっている
避難小屋は雪囲いされて入ることはできない 避難小屋から上もまだ雪が残っている
部分的には夏道が出ているが短距離 ここはアイゼンのまま通過
標高2600m付近。雪を伝って夏道より東へ 標高2630m付近で夏道に乗りアイゼンを外す
標高2670m付近のみ残雪あり ここで男性とすれ違った
ウルップソウはまだ咲き始めたばかり 昨年秋の大雪渓通行止めのロープ
村営頂上宿舎。まだ人は入っていないようだ 氷が張っていた
テント場の雪は皆無 県境稜線に出た
白馬岳を見上げる ミヤマキンバイはたくさん咲いていた
オヤマノエンドウも多く咲いていた おそらく村営頂上宿舎の水源用ホースだろう
今シーズン初のツクモグサ 白馬山荘。まだ西側の建物しか開いていない
今週降った新雪がまだ残っていた ハクサンイチゲ
白馬岳山頂。1時間の滞在中、ずっと無人だった 白馬岳から見た大雪渓
白馬岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
白馬岳から見た穂高、槍ヶ岳
白馬岳から見た裏銀座方面
白馬岳から見た立山、剱岳
白馬岳から見た後立山 白馬岳から見た白馬山荘
白馬岳から見た名剣山、百貫山。もう雪が無い 白馬岳から見た清水岳
白馬岳から見た雪倉岳、朝日岳 白馬岳から見た猿倉登山者駐車場
下山時には早くもガスが上がり始めた 白馬岳を振り返る
下りで使った稜線の登山道沿いにはツクモグサが多い ツクモグサの群落
この株が最も花が開いていた ウルップソウ
白馬山荘 丸山山頂
丸山の南側のみ残雪あり ウルップソウ。これで一番開花が進んだ株
久々のチシマアマナ。数年前の針ノ木岳で見て以来だ 2600m鞍部
2600m鞍部の岩陰にオス雷鳥がいた アイゼンを履いてピッケルを持って大雪渓へ下り始める
下り始めは雪壁に近い急傾斜 傾斜が緩んでカール状になる
下ってきた斜面 標高2380m付近でトレースに合流
トレースとは別ルートで登る男性。ノーアイゼンにストックだが大丈夫? 標高2300m付近で夏道に乗る
朝は閉じていたミヤマキンポウゲが開いていた おそらくミヤマネタネツケバナ
ヤマガラシ 標高2200m付近で大雪渓に乗る
標高2200m付近から見下ろした大雪渓 標高2120m付近.。稜線がガスに覆われたようだ
スキーヤー。この他に数人見かけた 標高2030m付近
標高1920m付近。往路で石か雪が落ちてきた谷 標高1830m付近。左岸から土砂が押し出している
標高1720m付近 標高1690m付近。そろそろ左岸斜面へ花探しに
標高1690m付近から上流を見る 早速シラネアオイ発見!
シラネアオイ オオサクラソウ
オオバキスミレ オオバキスミレの群落
標高1610m付近 ショウジョウバカマ
エンレイソウ。他で見る個体よりかなり小さかった 標高1500m付近で雪はおしまい
標高1500m付近から上流を見る ニリンソウ。あちこちでたくさん咲いていた
サンカヨウも花盛り キヌガサソウ
標高1440m付近の橋 ズダヤクシュ
ミヤマカタバミ 林道終点。車が1台あった
オオタチツボスミレ 長走沢で軽く水浴び
大パーティーが上がっていった キクザキイチゲ。ここで見るのは初めて
オオカメノキ 左のショートカット道を下った
ツボスミレ 猿倉分岐。私は林道を直進
ミヤマキンポウゲかウマノアシガタか微妙な標高 小規模な群落を作っていた
タニウツギは花盛り 猿倉駐車場着。満車ではなかった


 先週の常念岳の標高差は約1600mだったが、無雪とはいえ比較的余裕を持って往復できたので、今週は標高差約1700mの白馬岳を目指すことにした。ただし、ここは残雪がまだ多いので10本爪アイゼンとピッケルが必要で、アイゼンの重さが足に長時間かかった状態になるので標高差以上にきついのは間違いない。それでもゆっくり登るか途中で休憩を入れれば大丈夫だろう。

 白馬岳は既にツクモグサが開花したとの情報が入っており、ウルップソウも咲き始めたとのこと。これら2種類の花は本州では白馬岳周辺と八ヶ岳でしか見ることができない貴重なもので、私もこれを見るのを楽しみにしている。今回はこの2種類の花を見ることと体力テストが大きな目的だ。

 週の前半は寒気が通過して何と白馬岳では降雪があったとのことだが、その後は晴れの日が入ったので新雪はほぼ消えただろう。木曜、金曜と再び寒気が入って大気の状態が不安定化したが、週末には回復して土曜日は好天予報。予報によれば白馬岳山頂の気温は+3℃だが風は無風に近い状態であり、晴れるので体感的にはそれほど寒くはなさそうだ。

 金曜日は早く出発して猿倉の登山者用駐車場に入ったのは午後7時前。車は数台しかないほどガラガラでびっくり。白馬山荘は既に営業しているが、木曜金曜と大気の状態が不安定だったので入山者が少なかったようだ。酒を飲んで寝たが夜中に上がってくる車の数も少なかった。まあ、まだ夏山シーズン前だからなぁ。

 午前1時に起床すると星空が広がっていて予報どおり天気の心配は無いようだ。朝飯を食って午前2時前に出発。今回はまだ日中の気温が真夏ほど上がらない予報で下山時に大汗をかかされずに済みそうなので、山頂到着を日の出の時刻に設定せず午前6時〜7時の間とした。時刻を遅くして日が高くなれば夜に閉じていたツクモグサの花が開くだろうとの考えもあった。

 今回の残雪装備は10本爪アイゼンにマジなピッケル、それにロングスパッツである。登山靴は防水性が劣化しているので皮の部分には防水ワックスを染み込ませ、布の部分は撥水スプレー。まあ、この時期の雪はそれほど沈まないので水没しないだろうけど。下山時の暑さ対策は麦藁帽子、扇、濡れタオル。顔の日焼け止めも忘れない。今回は雪が絡むので晴れると日焼けが半端ない。

 午前2時少し前に出発。駐車場に上がってきた車が仮眠準備している中での出発だ。林道を歩いていると私の2倍くらいの足の運びの足音が接近してきてあっという間に若い男性が追い越していった。大雪渓に入ってこの人のライトの光がまともに見えたことがなかったので、大雪渓だけでおそらく1時間以上の差が付いただろう。この時刻に歩くと言うことは日帰りで白馬三山周回だろう。林道脇にはニリンソウが大量に咲いていたが撮影は帰りに。

 林道終点から登山道に入って標高1500m付近の白馬尻に向けて一直線に上がる沢の入口で雪に乗る。雪の上からでは分からないが、この雪渓末端は沢の真上の雪が薄くて人間が乗るのは危険であり、左側の踏跡を少し辿ってから雪に乗った。雪は思ったよりもカチカチではなくキックステップが利いてアイゼン無しでも歩ける状態だが、そのうちにアイゼンが必要になるのは間違いないので適当な場所でアイゼンを装着してピッケルを手に持った。これでザックは格段に軽くなったがアイゼンの重さが足の先端に付いたので足は重くなる。まあ、これもトレーニングだ。

 傾斜が緩むと白馬尻だが今は建物は無い。おそらく今年もトイレだけ設置するのだろうが、それも7月に入ってからかな。白馬尻から雪渓の幅が非常に広くなりどこを歩くのか悩むような光景が続くが、枝沢の雪渓に引き込まれないためには右岸(登りでは左側の岸)に近い側を登るのがいい。それに事前情報で白馬岳側の沢から雪渓上に大量の土砂が押し出しているとのことで、これを避けるためにも右岸側が正解。登りはまだ暗い時間帯なので土砂の先端がどの付近まで達しているのか分からなかったが、標高1760m,付近で岩混じりの砂利が雪面を覆っている箇所があった。

 この他にも白馬岳側の谷から落石があるようで、私が登っている最中にも雪の上を転がり落ちていく物体の音が聞こえた。薄明るくなり始めた時刻で物体の詳細は見えなかったが、どうも岩ではなく雪の塊だったようだ。30mほど離れた箇所を猛烈なスピードで落ちていったが、あんなものが体に当たったらヘルメットなど意味が無いだろう。これまで何度も大雪渓を歩いているが、身の危険を感じるような落石に遭遇したのは初めてだった。落石は杓子尾根側の方が頻繁に発生するが、あちらは落ちてくるのは主に砂利であり、大きな石や雪の塊が落ちてくるのを見たことがない。

 今の時期は日の出は午前4時半くらいなので午前4時にはライト不要な明るさになり、東の空が赤くなりだした。大雪渓末端到着前に明るくなり、葱平の急な尾根区間は既に雪が消えていたので尾根末端に取り付くことにした。明瞭なトレースはこの尾根の右側の急な雪渓をストレートに上がっているが、滑落のリスクを考えると夏道を通った方がいい。この標高まで上がると雪はガチガチに締まってアイゼンの歯しか潜らなかった。

 標高2200m付近で葱平の尾根に取り付いてアイゼンを脱ぐ。例年通りだと次にアイゼンを付けるのは小雪渓のトラバースで、それまではおそらくずっと夏道が出ていてアイゼンは不要だろう。その予想は当たって雪の無いジグザグの夏道を上がっていく。ここはミヤマキンバイが多く見られる箇所だが既に咲いている株があった。8月でもまだ咲いているので2ヶ月も楽しめるわけだ。シナノキンバイはまだ蕾であった。

 標高2350m付近で夏道が雪に消えると小雪渓の取り付きで、傾斜がかなり急なのでアイゼン装着。明瞭なステップが雪の上に付いているのでルートに迷うことはない。途中から右にトラバース気味に上がっていって傾斜が緩むと避難小屋の裏手に出た。残雪期のルートはその時々によって変わるようだ。まあ、雪があるうちは歩きやすいところを歩けばいいのだが。帰りはここを下らずに杓子岳と丸山間の最低鞍部から葱平へ直接下る予定だが、そのルートは残雪はまだ充分に残って鞍部まで続いていそうで一安心。

 避難小屋を過ぎると傾斜が緩むが、足の疲労が溜まってここからがきつかった。まだ締まった雪面が続くのでアイゼン必携で、その重さが身にしみる。私の10本爪アイゼンはどちらかと言えば軽アイゼンと言っていいような軽いもので、通常の私の体力なら問題ないがコロナ罹患後はこれでも厳しい。長く夏道が出始めるのは標高2630m付近で、それまではアイゼンを装着したまま行動した。この間は休憩を入れないとだめかなぁと思ったりしたが、何とか気力で歩き続けた。この調子ではコロナ前の体調に戻るのはいつになることやら。

 夏道に乗るとこの先は短い区間だけ雪が残っている場所があるはずだが、おそらく先人のステップが残っているだろうからアイゼンが無くても何とかなるだろうと、ここでアイゼンを脱いでピッケルもザックへ括り付ける。ザックが一気に重くなったがアイゼンが無くなって足は軽くなり、雪の上を歩くよりも楽になった。といってももう疲れているが。ここで白馬山荘の宿泊者と思われる男性が下っていったが、硬く締まった短い雪の上は下りは結構厳しいと思うが、へっぴり腰ながらストックでバランスを取りながらかろうじて下っていった。素直にアイゼンを装着した方が良かったのではなかろうか。

 村営頂上宿舎はまだ人が入っていないようで窓やドアは木の板で雪囲いされたままだった。建物の前の登山道にはロープが張ってあり、何だろうと見ると昨年秋の大雪渓通行止めのロープがまだ張ったままであった。今年の冬は雪が少なく春の気温が高くて雪解けが早かったので、おそらく今年は秋に入る前に大雪渓は通行止めになってしまうだろう。裏手のテント場は例年通りにもう雪は無かったがトイレも雪囲されたままで使用不可だ。水源はまだ雪渓の下だが、少し下流に行けば水が流れているので水の確保は可能である。今回は下から持ってきた200ccの水だけでも充分だった。小屋前には氷が張っていてびっくり。

 県境稜線に上がると剱岳が姿を現すが少し霞んでしまっている。今日は空気の透明度がいまいちで見えている南限は穂高であり、南アルプスや八ヶ岳は影も形も見えなかった。東に見えるはずの志賀高原の山々も全く見えなかったので、奥日光が見えるはずもなかった。そろそろ気圧配置も春から夏へ移行中かな。

 白馬山荘への登りはいつものように雪は皆無。山荘発の2人とすれ違った以外は人の姿は無し。登山道脇にはミヤマキンバイ、オヤマノエンドウが多く咲いていたが、お目当てのツクモグサも発見! この時期はまだ植物が少ないので地表を這う背丈の低さでも目立つ存在だ。ウルップソウも芽を出しているがまだ形が小さく花は根元に近い部分だけが咲いていた。見頃は2週間くらい後かな。

 白馬山荘の東西の建物の間で古い雪が登場し、日当たりが悪い建物の裏手にはまだ大量の残雪があった。日当たりが良い登山道にも雪が現れたが、これは古い雪ではなく今週降った新雪の名残。10cmくらい積もったようなのでまだ残っているようだが、好天が続けば今日にも消えてしまうだろう。土曜朝なのに登山道には人の姿は皆無で、白馬岳山頂に到着しても人の姿は無かった。昨日は天気が不安定で県境では雨だったらしいので宿泊者は少なかったのだろう。まあ、猿倉の駐車場があの台数だったからなぁ。  昨年に白馬岳に最後に登ったのは8月だったので10ヵ月ぶりの山頂。天気は良いが残念ながら空気の透明度が悪く、見えるのは北アルプスのみ。今年の大型連休以降の北アはいつも空気の透明度は良好で春らしい陽気であったが、今回は気温はまだ低いが湿度が高く夏場のような状態だ。山頂で1時間ほど休憩したが、まだ午前7時前なのに早くもガスが上がってきたのも夏山っぽい。

 今回は疲れたので無人の山頂でザックを横たえてその上に寝て休憩。東寄りの風がややあるが山頂は西に傾いて風をブロックするので、ダウンジャケットを着れば快適だった。今は残雪期と夏山の端境期で人は少ない時期だが、白馬岳の山頂で1時間の休憩で誰も登って来なかったのは初めてだ。おそらくよほど天気が悪い日でない限りはこんなことは今後も無いだろう。

 休憩を終えて下山開始。帰りは往路を戻るのではなく、残雪期限定のルート取りとすることに。村営頂上宿舎前を通らずに県境稜線を南下して、丸山と杓子岳間の最低鞍部である2600m鞍部から小雪渓取付地点に直接下るルートである。このルートならアイゼンを使うのは2600m鞍部以降で、そこまではずっと夏道を歩けるので足が軽いし、南向きの尾根なので高山植物の開花は往路より進んでいるだろう。

 上空は晴れているが東側からガスが上がり始めた中を下山開始。直後に私と同じく日帰りで猿倉から上がってきたと思われる男性とすれ違う。ツクモグサが咲いているか聞かれたので周囲を探したが、白馬山荘から白馬岳山頂までのメインの縦走路脇はツクモグサは皆無ではないが数が少ないし、登山道から少し離れた場所にあるので、それらしい白い物体が離れた場所に見えるのみだった。そこで下山時はこのルートではなく崖っぷちのルートを下るようにアドバイス。このルートは肩より下部でツクモグサが登山道のすぐ横にたくさん生えているのだ。私もそれを見るためにそちらのルートにこれから移行するところであった。

 男性と分かれて崖っぷちの道へ。砂礫地ではミヤマキンバイとオヤマノエンドウが中心だが、肩を通過して木の階段を下り始めると土の斜面に変わってツクモグサが登場。往路の時間帯より日が高くなってツクモグサの花が開き始めていたので写真撮影。ここは白馬岳の登山道の中では間違いなくツクモグサの数も密度も一番だろう。

 白馬山荘を通過して縦走路に復帰するが人の姿は皆無。でもそろそろ大雪渓を登り終えた日帰り登山者がやってくる時間帯だろう。大雪渓分岐を通過して南下して丸山で写真撮影するが、今回は遠望が悪いのでパノラマ写真撮影は行わなかった。2600m鞍部方面へ下り始めると登山道から外れた岩場に男性の姿が。これはこの先の短い残雪帯を迂回するためだろう。このためにアイゼンを付けるのは面倒だからなぁ。その残雪が登場するが丸山側は傾斜が緩いので問題ないが、最後の下りはまだ締まった急な雪面で、確かにこれを越えるのは面倒なので迂回したくなるだろう。私は登山靴のエッジを効かせてどうにかクリアした。

この先は2600m鞍部まで雪は皆無。南向きの日当たりがいい斜面なのでウルップソウは往路よりも開花が進んでいたが、まだ満開ではなかった。2600m鞍部に到着して東側の雪渓に乗ると岩陰からオス雷鳥が登場。あちらもびっくりしただろうが私もびっくりした。可哀想なので少し離れた場所に移動して、これから予想される暑さ対策で半ズボンに着替えてからアイゼンを装着して大雪渓を目指して下り始める。

 昨年もこのルートを歩いているので様子は分かっている。最初だけ傾斜が急な雪壁状で、踵でブレーキをかけつつ左寄りに進路を取る。目の前にはカールの底のような傾斜が緩い場所があるが、その中央部より左手が大雪渓へ続くルートである。雪が消えた場所を伝うと大雪渓から続く沢に出るが、そこは既に雪が切れてしまっているのだ。その雪が無い島状のエリアの左側の雪を下っていって傾斜が増したところでトレースが登場。そのすぐ下が往路で使った夏道の終点で、ここでアイゼンを脱いで往路と同じく夏道を歩く。

夏道の左側にはまだ雪が残っていて大雪渓まで続いているが、ここは傾斜がかなり急で滑ったら止まらない斜度なので下りでは使いたくない場所だ。でもトレースはそこに続いていて、登ってくる登山者は夏道ではなく全てこの急な雪を上がってきていた。間違ったルートではないが、通常は葱平の尾根が出ている時期はそこの夏道の方が安全なのでそちらを使う。でも大雪渓から続くトレースがそのまま続くとそちらに引き込まれるのも当然だろう。

 夏道が雪に埋もれる終点(標高2200m付近)でアイゼンを再び装着して大雪渓下り。振り返ると稜線は既に雲の中に隠れてしまっていた。この短時間で急激にガスが上がってきたようだ。でもおかげで日が隠れて涼しく歩けるのは有り難い。逆に登りの人はこれからガスの中に入るのは気が滅入るだろう。大雪渓上にはポツリポツリと登山者の姿がある程度で、夏山シーズンと比較すれば圧倒的に少数であった。

 往路で落石にあったので下りは落石の音に特に注意しながら早足で下っていく。こういう時に下りは短時間で雪渓歩きが終わるので登りよりは安全性は高い。大雪渓上で休んでいる人も見られるが、落石の危険があるとは言っても長距離の雪渓歩きなので普通の人は休憩が必要だろう。明るい時間帯の下りでは大量の土砂が流出した様子が良く見えた。かなりの量だが厚さはそれほどでもないようだった。でも石が多くて歩きにくそうであり、雪の部分を歩くのが正解だろう。

 今回すれ違った中でスキーヤーは10人弱だったが、どういうわけかスキーブーツではなく長靴姿が目立った。それとも歩きの間だけ長靴で、滑るときはブーツに履き替えるのだろうか? 長靴を使うのは歩き慣れたベテランのはずであり、何らかのメリットがあるのは間違いないだろう。

 高度が落ちてhy7往古プ1700m付近で左岸の傾斜が緩んだところで左岸に接近してシラネアオイ探し。ほとんどの人は知らないだろうが、この時期は雪が消えた傾斜が緩い左岸は花盛りである。白馬尻下部の夏道は右岸側にあるので大雪渓に乗っても右岸近くを歩くのが普通だし、大雪渓は幅が非常に広いので中央部を歩いても遠く離れた左岸に花が咲いていると分かることはまず無い。

 左岸沿いを歩き始めてすぐに目当てのシラネアオイを発見! 例年だとオオサクラソウも同時に咲いているはずなので周囲を見渡すと赤い花を発見! これがオオサクラソウである。残念ながら岸から離れた高い場所だったので望遠で撮影。手近なところではオオバキスミレがたくさん咲いていた。少し下るとニリンソウが花盛り。ニリンソウは白馬尻から下の夏道や林道沿いでもたくさん見られた。エンレイソウも見かけたが、他で見るよりもずっと葉が小さかった。これから大きくなるのか、それとも個体差なのかは不明だ。

 白馬尻付近からは左岸は大きく北に離れていくのでここで花見を諦めて夏道に近い右岸に移動。白馬尻は全く除雪されておらず建物の基礎はまだ雪に埋もれたままだった。さらに下ると往路で村営頂上宿舎近くの短い雪の上ですれ違った若い男性を追い越した。この男性との時間差は山頂での1時間の休憩等を含めれば2時間近くあったはずで、まさか追いつくとは想定外だった。しかし、すれ違った時の怪しい足の運びや、今は傾斜が緩いのにバックで下っている様子(おそらく膝が笑っているのだろう)からして、脚力とコースが釣り合っていないのは間違いなさそうだ。それでも雪の急斜面を無事にクリアできたのだから、全くの初心者ではなさそうだった。

 雪渓から夏道に移り変わってようやくアイゼンの出番はおしまい。夏道に出ると気温が上昇して暑い! 扇と濡れタオルを取り出して麦藁帽子を被る。麦藁帽子は晴れた稜線では大活躍したが、2600m鞍部から雪渓に乗って以降はガスが上がった雲がかかりだして日影に入って活躍の場が無かった。夏道の脇にはニリンソウの他にシラネアオイも見られたが昨年よりも数がずっと多かった。サンカヨウやキヌガサソウはもっと多く見られた。

林道に出るとすれ違う登山者や散策を楽しむ人が多くなってきた。下山時は暑くて汗をかいたので雪が完全に消えた長走沢で軽く水浴び。水浴びを終えて出発準備中に20人くらいの大パーティーが上がっていった。林道脇ではまだオオタチツボスミレ、ツボスミレが咲いていた。標高が低い所ではスミレはとっくに終わりの時期だ。タニウツギは真っ盛り。このルートでは初めて見るキクザキイチゲを発見。これも麓ではとうの昔に咲き終わっている花だ。残雪期に中越の山に登った4月中旬に咲いていたのと比較すれば2ヵ月も遅い。これも標高が高いためだろう。何せここは中越の山の山頂よりも標高が高い(笑)

往路では存在を忘れていた林道のショートカット道を通る。これを利用すると鑓温泉登山口は通過しない。猿倉分岐を見送って林道を直進すると、例年通りに林道右手脇にミヤマキンポウゲと同じ花が咲いていた。この標高ではミヤマキンポウゲなのかウマノアシガタ(キンポウゲ)なのか微妙な線だが、花も葉も見た目はミヤマキンポウゲそのものであり、ここではミヤマキンポウゲとしておこう。

 駐車場に到着すると、昨年同様に南端は工事用道路になっていて駐車スペースは狭くなっていた。でも駐車場にはまだ空きがあり、入りは7〜8割と言ったところだった。いい場所を確保しておいたので車は日陰の中でドアを開けても中は涼しかった。いつの間にか晴れのエリアに入っていたが、ここから見上げる白馬岳は雲の中だった。

下りは花を探しながらのんびり歩いた影響もあってか、足の疲労は軽かった。半分以上の区間でアイゼンを付けた状態で標高差1700mの登りは結構きつかったが、何とか休憩無しで登りきることができたので、この分なら無雪の標高差1900mの鹿島槍も何とかなりそうだ。ただし、赤岩尾根上部の雪が消えてアイゼンやピッケル無しで通過可能になるまでにはもう少し後かな。

 

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